金曜日に大事な取引がありました。
前日も夜遅くまでボスとお客さんとやりとりがあったりして
私には珍しい体験でした。
いつもは全部ボスに丸投げだからです。
お客さんがお見えになったのが夕方の5時半。
なかなか私の方から連絡がこないのが心配らしく
2、3時間ごとにボスから電話が来る。
「前日お客さんと確認の連絡をしてあるので大丈夫です」と言いつつ
内心ドキドキ。
「お前が初めて一人で相手したお客さんだからしっかりやってこい!
健闘を祈る!ははは!」とボスは他人事のように笑う。
*
お客さんを待ちながら、いつも通りに業務をこなしていたら
なんかこの感じ、何かに似てると思いました。
なんだろう、なんだろう。
そしたらば
「旦那さんから『そろそろ帰る』と連絡が来たのはいいものの、
なかなか帰って来なくて、まだか、まだか、と
せっかく作ったおかずが段々冷めていくのを悲しく眺めている奥さん」が浮かびました。
あぁ、奥さん…
そして私はどうしてもお客さんに
「何時頃になりそうですか?」と聞きたくありませんでした。
前日「伺う前に連絡します」と連絡が来たので
私はそれを信じたかったのです。
お客さんを信じているのではなくて
お客さんを信じた自分を信じてみたかったのです。
どうしても。
そんな風に思った次の瞬間
神様からの合格のサインかのように電話が鳴りました。
「今から伺います」
*
お客さんはとっても紳士な方で
お見えになった時、私は矢野顕子を結構な音量で聴いていたのですが
その場の雰囲気は崩れることもなく、調和していたので
私の勘は、やっぱり間違っていなかったのだと思いました。